「田久保先生のこと」
     ◆ 武藤 都喜子:ヴァイオリン (伊東市)

 
また伊豆フィルの定期演奏会が近づきました。指揮者は、本年6月のファミリーコンサートと同じ田久保先生です。演奏会のあとで、「指揮者の中で田久保先生が一番好きです。いい指揮者ですね。出始めがいいです。客席をくつろがせ、楽しませて下さる演出もお上手ですし・・・」という声を聞きました。
 そう言えば先生は、歌についてもくわしく、管楽器や打楽器は勿論、弦楽器では指や弓の使い方についてまで「この方がいいだろう」「こうしてくれ」と、要求を出され、最後までご自分の納得のいく音にに近づくための工夫を熱心にされます。ファミリーコンサートのせいもあり、客席を意識してとんがり帽子をかぶってみたり、よくみつけてこられたと思うような衣装をまとったりして、楽しみながら指揮をされます。
 指揮棒を振るだけでも汗だくになるのに、振り終わるとすぐにマイクを持って、客席に向かって次の曲の解説をされるという具合に、先生はいつも物静かな方ですが、ここぞという時にはねばり強さとたくましさを発揮されます。
 ナレーターのお話中に、その中に入ってひとりの役割を担当して雰囲気のある声を入れるなど、演技ではないなまり方で舞台を盛り上げられるのです。
 たしかにこれまでの指揮者にはないキャラクターの持ち主で、心から伊豆フィルを愛し、引き立てて下さいます。しばらく先生の指揮が続きましたが、来年は別の指揮者になりますから、田久保ファンにとって、今回はお馴染みの杉谷昭子さんをソリストの迎えることでもあり、必聴のチャンスになります。
 伊豆フィルには第2回から参加し続けて16年になりますが、これまでよい指揮者に恵まれました。私がヴァイオリンのレッスンを始めたのは、戦後まもなく、ストラディバリウスで諏訪根自子奏でるツィゴイネルワイゼンに心揺さぶられたからでしたが、そのころオーケストラの楽しみも覚えたのでした。
 今回も精一杯頑張ります。終わったあとの達成感と至福の時を夢みながら・・・。


                       (第29回定期演奏会に寄せて)

 「君知るや伊東のオーケストラ」
     ◆ 石井 博:ホルン (小田原市)

 かつて様々な芸術家が、明るい太陽と美しい海のイタリアに憧れたように、私にとって伊豆の地は、光に溢れ風薫る魅力的な場所でした。そんな伊豆の町伊東にオーケストラができたことを知り、第2回の定期演奏会を聴いたのは随分と前のことになります。懐かしい仲間の顔も何人か見える伊豆フィルハーモニーの響きは、温かく輝いて聞こえ、海岸を歩いて帰る伊東駅までの道は、風呂上がりの散歩のように爽やかだったことを覚えています。時は経ち、小田原のアマチュア音楽団体にいた私が、強制連行のように伊豆フィルの練習場である旭小学校に連れてこられ、その一員となることを決心させられたのは昨年のことでした。入団した要因は幾つかあるのですが、その大きな一つに旭小学校の自然に囲まれた豊かさがあります。伊豆の海が望める小高い山、木々に囲まれて建つ小学校の一室を借りた合奏練習では、心に沈み込んだ日々の屈託が消えていく清々しさを感じました。練習の音が止むと、開け放った窓からは蝉しぐれ、木々の葉を揺らす風の音、微かな潮の香りが吹き抜けて「ああ、ここで決まりだ」と感激し、温かい誘いに感謝したのです。
 音楽が好きなことは勿論、「好きこそ物の上手なれ」で上手な方ばかりなのでしょうね、とよく言われます。確かに羨ましいくらい上手な方も多いのですが、「好きだけど上手になれない人もいる」ことも事実。私も最後の手段で、楽器に「うまく音が出ますように」と念じたりしています。楽しそうに見える趣味の集まりですが、音楽上の役割に責任を持つ厳しさは当然あります。練習不足を観念して車に楽器を乗せ、伊東に向けて家を出るまでには、仕事とは違う自分との戦いがあったりします。こんな風に60人からの人たちが作り上げる音楽が面白くないはずがありません。今度の伊豆フィル定期演奏会では、演奏を聴きつつ、その様に一人一人を眺めると、違った親しみを感じて頂けるかも知れません。

                       (第29回定期演奏会に寄せて)

 「実は楽しい現代音楽の名曲:屋根の上の牛」 
      ◆ 原田 武雄:ヴァイオリン (御殿場市)

 ここで紹介するのは、今回演奏されるミヨー作曲のバレー音楽、『屋根の牛』。
伊豆フィル定期演奏会では久々の20世紀の音楽。(ファミリーコンサートでは久石譲とかアンダーソンはやっていますが・・・・)
 現代音楽は、とっつきにくい、わかりにくい、不協和音ばかり、とか、ともかく、食わず嫌いが多いのですが、意外とテレビでは使われてたりします。真央ちゃんが滑ってるアイススケートのBGMも、ハチャトリアンの仮面舞踏会という現代音楽です。短調でちょっと暗い感じがするものの、親しみやすい旋律とゴージャスな響きで、もう一度聴きたくなる様な曲です。
 今回演奏する屋根牛も、同様にとても親しみやすい曲です。この曲は、1917年、ミヨーが外交官としてブラジルに赴任していた頃の、陽気に楽しい思い出をイメージして作曲された曲です。
 "ギッコギコッコ"って感じの、のこぎりの様な音で奏でるサンバモドキのリズムに乗せて、当時のブラジルの流行曲を繋ぎ合わせたものです。なので、中身は20世紀初頭のブラジルの歌謡曲メドレーだったりします。でも、ただのメドレーではありません。街を歩いていて、色々な音楽が聞こえる様に、全然違う旋律が同時に流れていたり。車のクラクションのように、突然トランペットがパパパーと鳴ったり。裏路地から表通りに出てパッと明るくなる様に、哀愁たっぷりの旋律からパッと底抜けに明るい曲に変わったり。陽気だけど、ちょっと悲しいブラジルの街の風景が浮かび上がってくるような曲です。ジャンコクトーも大変この曲を気に入ったようで、あっという間にバレエの台本を書いて、パトロンを見つけてきて、シャンゼリゼ劇場で公演してしまいました。第一次大戦後、ジャズなどのアメリカ文化が大挙して入ってきたパリ。ブラジルの親しみやすい旋律と陽気なリズム、さらにはお洒落な舞台芸術と愉快な大道芸人の演じるバレエ、ナンセンスな台本と相まって、大受けだったようです。
 今でも、パリにはこの作品から名前をとった『屋根の上の牛:Le Boeuf sur le Toit』というお洒落なレストランがあります。伊豆フィルの演奏を聴いたからには、パリに行った際には屋根の上の牛でのお食事などどうでしょうか?

                       (第29回定期演奏会に寄せて)
 
 「杉谷さんの『皇帝』」 
     
            ◆ 伊豆フィル副代表/齊藤 真知子 (伊東市)

 10月にベルリンフィル弦楽五重奏団と伊東の観光会館で室内楽を催し、ほぼ満席のお客様に深い感動を残した杉谷昭子さんが、今度は伊豆フィルと2回目の協奏曲共演で登場致します。1回目は、昨年6月の第26回定演でのチャイコフスキーのピアノ協奏曲でした。山口県から運び入れたスタインウェイのピアノの音色は、観光会館の天井からきらきらした水滴となってこぼれ落ちてくるようでした。同じ先生の門下生として、私も音色にはこだわってきたつもりですが、それは私の心に直接響く、衝撃的な美しい音色でした。その後、伊豆フィル主催の杉谷昭子ピアノ講座「音の宝石箱」を企画したのも、その音色の秘密を解き明かし皆さまにもっとピアノの魅力を知ってもらいたかったからです。
 1995年、杉谷さんは世界で初めて、女性としてベートーヴェンのピアノ協奏曲全6曲(第6番は、バイオリン協奏曲を作曲者自身がピアノ版に編曲)をCDとして出されたのですが、「皇帝」は「弾きながら、いつも涙する箇所がある」そうです。思いがけない言葉でしたので思わず聞き返しますと、丁度ベルリンでこの「皇帝」録音当日の朝日本から入院中だったお母様が亡くなったという電話を受け、それでも録音に臨んだということをお話し下さいました。何年、何十年経とうとその時の状況をまざまざと思い起こさせる音楽の力とは凄いものです。
 前回のファミリーコンサートでも人気の高かった田久保裕一先生のあの熱い指揮振りと、またしてもピアノを運び入れ、「渾身の演奏」の杉谷さんが一緒になったときにどんな音楽が生まれるかと思うと、12月13日が待ち遠しくてなりません。このほか、めったに聞けない曲目としてミヨー作曲「屋根の上の牛」と、情熱的なチャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」、オープニングはスッペの「詩人と農夫」です。どれもが、気の抜けない演奏曲目ですが、「生で聴けて良かった!」とお客様に思って頂けるよう、団員一同も一生懸命練習しております。
  何かと慌しくなる12月ですが、皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

                       (第29回定期演奏会に寄せて)
 
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伊豆フィルハーモニー管弦楽団


伊豆フィルは、音楽を愛する心と“わくわくする心”を持ち続け、常に新しいよろこびを求める愛と調和を奏でることにより、伊豆を中心として地域文化の発展に寄与する事を目的としてます。

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